日本新薬ツイッター事件

日本新薬ツイッター事件(2011年)とは

140字で個人の近況や心境を「つぶやく」という手軽さがうけ、20代社会人の約6割が利用するツイッター(twitter)。その手軽さゆえに、他愛ない発言でもインターネットという開かれた世界に拡散していくものだということを忘れがちです。そんな背景で、日本新薬の医薬品情報担当者(MR)の女性が、同僚が飲み会の場でふざけて睡眠薬を不正使用しているという内情を、ツイッターで気軽に暴露してしまったというこの事件。医療に従事する企業だけに、ニュースは世間に大きな衝撃を与えました。

飲み会でハルシオン

ツイッターでつぶやく

同社は、いわゆる後発薬メーカー。事件当日、社員同士の飲み会の席に、一人の男性社員が睡眠薬「ハルシオン(後発品)」を大量に持ち込み、罰ゲーム感覚で酒に混ぜて同僚に飲ませるなどします。後々の調査で、この男性社員が薬局で正規購入したものと分かりましたが、ハルシオンの治療目的以外の使用は麻薬及び向精神約取締法で禁止されており、これは明らかな違法行為です。

おそらく、これが初めてのことではなかったのでしょう。その行為をうすうす犯罪だと認識していた女性社員の一人が、ふとツイッターでつぶやきます。あってはならない事件が発覚したと同時に、ネット炎上事件へと発展するのです。

▼日本新薬の女性のツイート内容▼

「でもうちの社員、仲良い薬局からハルシオンの後発まとめ買いして飲み会の時に酒に入れたりしてるしな。危険過ぎ」

「飲み会(泊まり)での悪戯です(笑) てか一歩間違えたらスーフリ並の犯罪なのに…さすがに女子には 飲ませてませんでしたが、飲まされてた上司は超しんでましたよ」

あまりに無防備だった女性社員

女性社員はツイッターのプロフィールで実名と「某製薬会社の医薬情報担当者です」などと詳しい身分を公表していました。それゆえに、「企業人としてのモラルに反する」といった批判を一手に浴びることになります。

なかなか削除しなかった

一度は「Twitterで公表することでも無いので早めに削除します!」と宣言しながらも、問題のコメントを削除せず、2ちゃんねるなどに非難が拡散。またたくまに炎上します。女性のブログや他SNSから実名やプライベート写真をはじめとする個人情報も洗い出され、ネットユーザーたちの祭りの格好のターゲットとなってしまいます。

最悪だった会社側の対応

「お詫び」ではなく「お知らせ」!!

批判は、女性MRのモラルの低さだけでなく、同社の対応にも及びました。ツイッターへの書き込みから5日後、同社ホームページに掲載された「ネット書き込みに関するお知らせ」と題した謝罪文には、タイトルに「お詫び」の文字がないことに疑問の声が続出。その内容も、発覚後まもなく着手した内部調査に基づく、経緯と事実関係、再発防止策の説明はもれなく入ってはいるものの、どこか事務的な印象を受けるもので、反省や謝罪の色が感じられないと、ふたたび非難の声が広がりました。

▼日本新薬のコメント▼

ネット書き込みに関するお知らせ
 先月末より、インターネット上で「日本新薬社員がハルシオン後発品を不正使用」という内容の書き込みが頻発しております。本件について社内調査を実施致しました結果、以下のような事実が判明致しましたのでお知らせ致します。

1.Twitterへの書き込みについて
 2011年8月29日、Twitterに、「当社社員が懇意にしている薬局からハルシオン後発品(以下、「本医薬品」)を不正に入手し飲み会の時にお酒に入れた」旨の書き込みを当社の女性社員が行いました。これは、2009年5月、社員有志で行った私的な宿泊付きイベントの帰りの車中で、前夜に行った男性数名の宴席での出来事について、同乗した社員が話していた内容を聞いて書き込んだものでした。従いまして、本人が直接目撃・体験したものを書き込んだものではありませんでした。

2.判明した事実関係について
 本医薬品をお酒に入れて飲ませた行為につきましては、ある男性社員が、同宴席において2名の男性社員のお酒の中に、安易な気持ちで1錠ずつ入れたことが判明致しました。しかしながら、本医薬品は、不正に入手されたものではなく、自身の治療の為に医療機関から処方されたものでした。
 本医薬品を飲まされた2名の男性社員につきましては、1名はその後間もなく、もう1名は引き続きお酒を飲んで就寝し、両名とも翌朝通常通り起床致しました。

 医薬品を取り扱う製薬企業の社員が、業務外の場面とはいえ、医薬品を使って不適切かつ不謹慎な行為を行いましたこと、衷心より深くお詫び申し上げます。
 当社と致しましては、関係者に対して適正なる処分を行うとともに、このような事態を二度と引起さないよう対応策をしっかり検討した上で、社員へのコンプライアンス教育と意識改革の更なる徹底を図って参ります。

                                                   以 上

メディアも批判

メディアの批判記事も相次ぎます。その最大の理由は、「お知らせ」の文面から真相究明に向けた真摯な姿勢が感じられないこと。そして、説明内容も不自然な点が多かったからです。

同社は、公式サイトに掲載したお知らせ文のコピーを、同日夕方、京都府と厚生労働省へファックスしました。マスコミや一般市民には説明責任を果たさず、監督官庁のご機嫌をとることに終始する姿勢は、批判されて当然でした。

結果的には不正の告発になった

この事件の本質は、こともあろうか人命にかかわる医療に従事するメーカーで、医薬品を宴会の席で不正使用するという犯罪が実際に行われたこと。この事実に関して、釈明の余地はありません。

女性社員の行動は、こうした不正使用を告発することにつながり、その点では役に立ったといえます。

実態は、悪ノリの武勇伝

とはいえ、この女性は不正を告発する意図で書き込みをしたわけではありません。親しい友人たちに、ちょっとした悪ノリで“武勇伝”を語ったつもりにすぎませんでした。 そういう意味では、たちの悪い企業秘密の暴露だったともいえるでしょう。

この事件は、ソーシャルメディアの時代において、個人のSNS利用と企業の関わりについても、より具体的に、厳しく、ガイドラインを定める必要性を示唆しています。

個人への誹謗中傷の被害

実名が広まる

女性MRは、公私の別なく、会社での出来事や愚痴などを日常的にSNSやブログに投稿していました。ツイッターやmixiのプロフィールには堂々、実名を載せていたため、facebookの略歴から勤務先も容易に割り出され、「製薬会社の社員が社内犯罪を悪びれもなくリークしている」という、非難のターゲットとなったわけです。

mixiやブログから顔写真が拡散

2ちゃんねるには日記からの転載のほか、mixiやブログから引っ張ったプライベート画像が大量に掲出されました。その写真に対しても「ブス」「酷い顔」などというこっぴどい中傷コメントが相次ぎ、画像とともに、コピーサイトからコピーサイトへと、延々と広がっていきました。

消えない画像

事件後今でも、女性MRの個人情報はネット上にさらされ続けています。実名で、無修正の写真を公開し、仕事や会社での機密事項をSNSに掲載する。その行動が、たいへん不幸な誹謗中傷を招いてしまったのです。

今も続く「検索での被害」

「ハルシオン=不正使用」のイメージに

Googleのフリー検索で「日本新薬」と入れると、検索候補、関連検索キーワードともにハルシオンの表示が出てきます。製造元は別会社で、同社では後発薬を取り扱っていないものです。そして「日本新薬 ハルシオン」で検索にかけると、そこに表示されるのは、事件の概要を思い出させるものが大半。業界にとっても、メリットなき負の遺産となってしまっています。

「2ちゃんねるが見たい」のが心理

そして、「2ch」「2ちゃんねる」へのリンクも表示圏内に現れ、先に進むと、もちろん多くがこのツイッター事件に関連するスレッドに飛びます。時間がたてば薄れてゆく人々の記憶とは違い、ネット上に散布されたネガティブな情報というのは自然と消えることはありません。他人のネガティブ情報が気になる人間の心理。2ちゃんねるがネット上で台頭しつづけると同時に、こうした検索ワードも、一般の人々の好奇心によってずるずると生かされ続けてしまうのです。

▼Googleの関連検索キーワード(2012.11.7現在)▼

日本新薬 採用
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日本新薬 シアリス
日本新薬 ハルシオン
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2ちゃんねる 日本新薬
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▼Googleの検索候補(上から)(2012.11.7現在)▼

日本新薬 シアリス
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日本新薬 ランキング
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s 日本新薬 2ch
日本新薬 ハルシオン
日本新薬 年収

▼ヤフーの虫めがね(2012.11.7現在)▼

日本新薬
(上)
日本新薬株式会社
日本新薬野球部
日本新薬こども文学賞
日本新薬 野球

(下)
日本新薬株式会社
日本新薬野球部
日本新薬こども文学賞
日本新薬 野球
日本新薬 ラグビー
新日本新薬
日本新薬 株価
日本新薬 マグミット
日本新薬 採用
日本新薬(株)

時系列でみる、日本新薬の対応

2011年8月29日 女性社員がツイッターで問題の書き込みを行う
9月2日~ ネット大炎上。騒動を受け、当該社員への事情聴取を実施
9月5日 同社公式サイトに「ネット書き込みに関するお知らせ」掲載
同日夕方、サイト掲載文を京都府および厚生労働省にファックスして報告

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